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食材へのこだわり


こだわりの衣

明治中期に洋食が日本に入ってきた頃、コートレットなるものが世に出てまいりました。この料理は、やや多めの油を用い、フライパンで焼き、その後オーブンに入れて火を通すものでした。しかし、当時の日本にはオーブンという設備がありませんでした。そこで、天ぷらのように揚げたらどうか?と考えられました。こうして、大正時代にとんかつが生まれました。現在のとんかつは、この大正時代の形をほぼ受け継いでいます。それは、「衣をつけて揚げる」という調理技術がとても優れているからです。
肉に衣をつけずにそのまま熱した油に入れると、熱の伝わりが急激すぎて、肉が縮み上がり、固くなってしまう、いわゆる「やけど状態」になってしまいます。その上、肉を包み込み、外部から遮断するものが無いので、美味しい肉汁が油の中に流れ出てしまうことになります。
衣の役目は、パン粉に含まれる空気によって、熱の伝わりを一度さえぎってから、徐々に肉の内部に熱を加える効果があります。そして、ジューシーな肉汁を肉の中に閉じ込め、ふっくらと柔らかく、旨味たっぷりに揚げることが出来ます。
パンには気泡があります。この気泡の入り方によって、衣に使った場合の熱伝導に差が出てきます。細かいパン粉は揚げ上がりがきれいな反面、気泡が少ないために、熱を防ぐ効果は低くなるため、とんかつにはある程度の粗さが必要になります。また、パン粉が油の中で加熱されると、中の水分が蒸発するのと入れ替わりに油がパン粉に染み込んでいきます。パン粉に油分が入ると、水をパン粉が跳ね返すため、水分が通りにくくなります。したがって、豚肉から水分が蒸発するのを抑えることが出来るのです。
知多家では、とんかつに一番適した独自の基準でパン粉の粗さを定め、使用しています。そのため、肉汁をしっかり閉じ込め、衣サクサク、肉は柔らかくてジューシーなとんかつが出来るのです。


※コートレット(cutelette):フランス語で『肉を薄く切る』の意味。もともとは、仔牛、羊、豚などの骨付き背肉をパン粉の衣をつけてバター焼きか網焼きにしたもの。しかし、いわゆる「カツレツ」は、肉の薄切りにパン粉をつけて油で揚げたもので、肉も骨付きではないので、ポークパネ・アングレーズ(Porc paner a l'anglaise)というイギリス風の料理を参考にしたとも言われています。


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